日本には四季があり、1年を通して温度変化もするためエアコンがかかせません。夏は、日光が照りつけまるでサウナのような屋外から部屋に戻ってきたときに、送風口から送り出されるひんやりとした適度な冷風は生き返るような心地よさですよね。冬には大雪となることもあり、そのような環境では、エアコンなしで過ごすことはとてもできません。
しかし、連日エアコンを使っていると消費電力と節約方法について気になることもあるでしょう。
そこで今回は、エアコンの仕組みと消費電力、そして節約術についてまとめてみました。ぜひ、参考にしていただき、日本の夏をお得にそして快適に乗り切りましょう!
目次
エアコンの消費電力について知ろう
まずは、エアコンの役割と消費電力について解説していきます。
エアコンの役割
エアコンは、室内の温度や湿度の調整をおこなうための空調設備です。室内にいる人の好みにあわせて空気環境を変化させ、快適で過ごしやすい環境を作り出すのがエアコンの役割です。
エアコンに求められる機能は、以下の3つです。
- ・温度を調整すること
- ・湿度を調整すること
- ・気流を発生させること
エアコンは、部屋の外にある室外機と部屋の中にある室内機の2つセットで稼働し、効率よく温度調整をしています。
また、エアコンには熱交換器という装置があります。この熱交換器で部屋の熱気や冷気を効率よく交換しているのです。熱には「温度の高いものから低いものへと移動する」性質があり、この性質をうまく利用することで部屋を暖かくしたり冷やしたりすることができるのです。
コンプレッサーとファンに電力が使われている
エアコンは電気代が高いというイメージがありませんか?実際に、エアコンは季節によっては多大な消費電力を必要とする家電です。
エアコンでは「コンプレッサー(圧縮機)の動作」と「ファンの回転駆動」に電力が使われています。エアコンを稼働させている間、室内機と室外機の両方に搭載されているファンを停止することはできません。どちらのファンも回転し続けるので、どうしても電力を消費してしまいます。
ファンは停止させることができないとなると、エアコンの省エネはコンプレッサーをどれだけ停止させられるかが問題というわけです。そこで、エアコンを自動運転モードにすれば室内の温度や湿度をセンサーが検出し、コンプレッサーの運転時間が自動調整されるため電力消費をおさえることができます。
エアコン消費電力は家電の中で4位!
資源エネルギー庁の“平成22年度省エネルギー政策分析調査事業 「家庭におけるエネルギー消費実態について」”の中で、2009年家庭部門、世帯あたりの電気使用量の詳細が示されています。そのランキングは以下のとおりです。
- 1位 電気冷蔵庫 14.2%
- 2位 照明器具 13.4%
- 3位 テレビ 8.9%
- 4位 エアコン 7.4%
- 5位 電気温水器 5.4%
エアコンの消費電力は、見てのとおり4位です。しかし、エアコンは季節ごとによって大幅に電気量が変わり、夏や冬にはまた異なる結果となります。
1時間あたりのエアコン消費電力
電気代は運転時の使用状況や電力会社との契約内容によって変化しますが、基本的に電気代は以下のような算出方法で計算されます。
<1時間あたりの電気代の算出方法>
1時間あたりの電気代=消費電力(kW)×電力料金単価(円)※1×1(時間)
※1:一般的に電力料金単価は27円/ kW h(税込)で算出(主要電力会社10社平均単価)
たとえば、消費電力(kW)が500Wだとします。
1時間当たりの定格電気代……0.5 kW × 27円/ kW h ×1時間=13.5円となります。
エアコンは室内の状況により能力を変化させるため電気代も変動し、1時間あたり約2.8円~24.8円の間で運転するといわれています。エアコンの年間電気代は、6畳で約20,000円、10畳で約25,000円となります。
エアコンの消費電力を確認してみよう
では、どのような消費電力がエアコンには使われているのでしょうか。ここからはエアコンの消費電力の種類について概要を解説していきます。
消費電力の単位である【W・kW・kWh】について解説
kW、kW hは、どちらも電気の検針票などに記載されている電力を表した単位です。それぞれの意味を、確認しておきましょう。
- ・W (ワット) ……電力の単位
- ・kW (キロワット) ……1 kW=1000W
- ・kWh(キロワットアワー) ……電力量の単位
※1kWhは、1kWの電力を1時間消費または発電したときの電力量
エアコンの消費電力の種類
・消費電力
消費電力とは、使用する電力の量を表す単位です。電圧(V)×電流(A)で求められ、Wで表します。
・期間消費電力量
期間消費電力量とは、エアコンの冷暖房の双方の期間を決めて発生した外気温ごとの消費電力を1年で合算したものです。この値が小さいほど効率よくエネルギーを消費していることになります。
エアコンは、室内の温度を保つために、外の気温にあわせてエネルギーを消費します。室内と室外の温度差や、室内外とエアコンの設定温度の差が激しいほどエネルギー消費は大きいです。
・エネルギー消費効率
エネルギー消費効率とは、家電製品が1kWあたりどれほどの性能を発揮できるかを示した値です。そして、この数値が大きいほど効率のよいエアコンだということになります。
【比較】どっちが消費電力が高い?
消費電力は電気代に直結します。消費電力をよく知っておけば、節約にもつながるでしょう。
それでは消費電力を比較することにより、知識を深めていきましょう。
比較1:冷房VS暖房
夏の暑さや冬の寒さを快適に乗り切るためには、エアコンの使用は避けされられません。そこで気になるのが消費電力です。夏の冷房と冬の暖房、どちらがより電力を消費しているのでしょうか。また、電気代はどのようになっているでしょう。
夏は大きくても室内と外気の温度差が10度以下なのに対し、冬は地域によっては氷点下になる場合もあるため、室内と外気の温度差が10度以上に大きくなります。
エアコンによる室内の温度調節は、外気との温度差によって必要な電力が異なります。温度差が大きければ、エアコンの設定温度を保つために常に暖気や冷気を放出しなければなりません。しかし、温度差が小さければ必要な暖気や冷気は少なく、外気が設定温度を下回れば送風のみで稼働することもあります。
このような理由から、一般的には冷房よりも暖房のほうが消費電力は大きく、電気代がかかるといわれています。
実際、一人暮らしの方の電気代の平均は、7~9月が約2,000円、1~3月が約2,500円と、夏と冬で約500円の差があります。
ただし、エアコンは1年中コンスタントに使用するものではなく、季節や地域によって使用量の差がとても大きい家電製品です。エアコンの消費電力の特徴を知り、使用する頻度や時間をうまく調節して活用しましょう。
比較2:旧型VS新型
エアコンの消費電力をおさえるためにひとつの選択肢として考えて欲しいのは、エアコンの買い替えです。最新のエアコンに買い替えるだけで、節約になることもあります。たとえば、15年前の古いエアコンを最新のものに買い替えると、約40%無駄な電気を節約することができるといわれています。
最新のエアコンは、体に優しく負担をかけない風を作ったり空気中の浮遊菌を除菌する機能が付加されていたりと著しく機能が向上しています。そのうえ省エネ性能が高く、買い替えれば年間約20,000円もの電気代節約になるといわれています。古いエアコンを使っているなら、ぜひエアコンをフル稼働する季節を迎える前に買い替えるとよいでしょう。
比較3:室内機VS室外機
エアコンを使用する際、普段操作をするのは室内機なので室外機には目がいかないものですが、電気代の観点でいえば室外機のほうが重要といっても過言ではありません。意外にも、電力をより多く使っているのは室外機なのです。
エアコンの電気代を減らしたいのならば、室外機の負担を減らして電力消費をおさえるのがポイントです。室外機のメンテナンスはとても節電効果が高く、電気代がお得になることでしょう。
電気代を見直し!【家庭用】エアコン消費電力の節約術
それでは、いよいよここからエアコンの消費電力をおさえる節約術を紹介していきます。ぜひ、実践してみてください。冷房や暖房によって節約術が多少異なってくるので、それぞれにわけていくつか紹介していきます。
【冷暖房共通】エアコン消費電力節約術
1.フィルターを掃除する
フィルターが汚れていると、約10~20%エアコンの性能が落ちてしまうといわれています。エアコンは定期的な清掃をし、常に清潔な状態を保ちましょう。
フィルターの汚れはエアコン性能を低下させるだけでなく、ファンやフィルターについたほこりを部屋中に拡散させてしまいます。その結果、ホコリやカビによってアレルギー症状を発症させてしまうこともあるのです。最低でも2週間に1回、掃除機で吸いとったり手洗いをしたりして、フィルターのほこりをとるようにしましょう。
2.室外機のまわりに空間を作る
室外機の周辺には、空間を作りましょう。室外機の前面にフェンスや壁があり排出した空気が跳ね返って室外機に戻ってしまうような構造では、エアコンの熱交換能力が非常に悪くなるのです。
空気を吐きだす排気口と空気を取りこむ給気口が近くにあり、お互いが影響しあって狭い空間で空気が循環してしまう現象をショートサーキットと呼びます。ショートサーキットは、エアコンが本来もっている性能を十分に発揮できず、エアコンの空調効果を大きく低下させてしまう原因になるのです。
ショートサーキットを防止するためには室外機の前面を十分に開放するのが原則ですが、狭い室外機スペースでは格子状フェンスの前に設置したり、風向調整をおこなったりするなど対策が必要です。
3.扇風機などを使って室内空気を循環させる
空気は、暖かいと上部流れ、冷たいと下部に流れる性質があります。そのため、空調効率をあげるにはエアコンの自動風向調整を使って空気を循環させましょう。扇風機やサーキュレーターも同時に使うと、効率よく暖気と冷気が混ざりあい、より快適な温度空間を実現できますよ。
【冷房】エアコン消費電力節約術
・室外機への直射日光を避ける
室外機が熱をもっていると、熱交換をスムーズにおこなうことができず、室内が冷えにくくなってしまいます。室外機への直射日光をしっかりと遮ることで熱交換の効率は向上しますので、室外機に熱がこもりにくい環境を作ることが大切です。
・我慢せずにはやめに冷房をつける
夏は節約のために環境のためにと無理をしている方もいるかもしれません。しかし「気温が上がるまでエアコンをつけないようにギリギリまで我慢……」というのは、節電・節約の逆効果になるともあるのです。
外の気温と室内温度の差が大きいと、エアコンを稼働させたときに電力を消費し電気代がかかります。つまり、温度差が小さければエアコンに負荷はかからず、消費電力を節約できるのです。できるだけ気温の低い午前中からエアコンを稼働させ無駄な電力を消費しないようにすると、ちょっとした節約になります。
・除湿を利用する
湿度は温度を感じるバロメーターです。エアコンの除湿機能を使えば、設定温度を下げずに涼しさをより感じやすくなります。
除湿は、温度を下げずに優先的に湿度だけを下げようとする再熱除湿と部屋の室温も下げながら湿度も下げる弱冷房除湿の2つあり、これらを使い分けるのがポイントです。よく似ていますがそれぞれ仕組みが違っているため、電気代にも差があります。どのように温度や湿度を調節したいのか、空調の目的によって上手に使いこなしましょう。
夏は室外機周りを涼しくすると節電効果がアップ!
室外機が日光にさらされて熱くなると、冷房効率が格段に低下します。とくに、夏場は気温が高く、稼働していなくても熱をもってしまいますので、室外機周りを涼しくなるような工夫をして節電効果をあげましょう。
たとえば、上からつりさげるすだれやグリーンカバーを設置したり打ち水をしたりすると効果が出るといわれています。
【暖房】エアコン消費電力節約術
・エアコン以外で暖をとる
ファンヒーターや電気ストーブ、こたつなどさまざまな暖房器具がありますが、それぞれ特徴が違います。器具の特徴ごとに上手に使い分け、暖めたい場所や使用目的ごとに電気代のかからない方法を選ぶと効率よく部屋を暖められます。
・カーテンや断熱シートを活用
直射日光は、カーテンやブラインドで遮ることで低減できます。部屋の外部に日よけやブラインドを設置するのもよいでしょう。室内に熱の侵入がなければ、設定温度に室温を維持できるため、コンプレッサーの運転を少なくでき省エネになります。
【業務用】エアコン消費電力の節約術
ここからは個人宅ではなく、職場など大きな空間での節約術を紹介します。
デマンド制御を有効活用する
30分間の平均使用電力をデマンド値、そしてそのデマンド値をおさえることをデマンド制御といいます。
デマンド値は、1ヶ月の平均ではなく、その月の最大デマンド値が基準となって毎月のデマンド値が算出されます。そして、1年で最も高いデマンド値が翌年の契約電力に反映されます。
つまり、消費電力量が最も多い月におけるデマンド値を抑制することにより、契約電力と基本料金の引き下げをすることができるのです。
目標デマンド値を決めて、それを超えないように調整することで、デマンド値をおさえることができるのですが、具体的な方法はいくつかあります。自動制御装置を導入したり、目標を超えそうになるとパソコンなどに通知が来るように設定したりといった方法です。これらの対策をおこない、1ヶ月のデマンド値をおさえることで、結果として年単位での電気料金の削減となるでしょう。
節電メニューやタイマーを上手に使う
エアコンには、エコモードや節電モードがついたものがあります。あらかじめ消費電力をおさえて運転するように設定されているので、このような機能を活用するのもよいでしょう。
また、すだれやよしずなどで窓からの日差しをやわらげたり、扇風機を使用したりするのも効果的です。すだれなどは電気を使用しませんし、扇風機はエアコンに比べて消費電力の小さいものです。
さらに、エアコンはタイマーをうまく使うことで、節電することもできます。寝る前には1~2時間後にエアコンが切れるようにしたり、出かける時間にあわせてエアコンが切れるようタイマーを設定したりするとよいでしょう。タイマーを利用することで、活動量の少ない時間や人のいない場所でのエアコンのつけっぱなしを防ぐこともできます。
建物に太陽熱を反射する塗料を塗る
建物の遮熱を利用して節電してみましょう。この場合の遮熱とは、太陽光の販社による屋根の蓄熱、それ自体を抑制する働きのことになります。太陽光は屋根にあたると熱エネルギーに転換、屋根自体の温度を上昇させるのです。屋根から熱が伝わって家、室内全体の温度も上昇します。
そこで屋根に塗る遮熱塗料の出番になるのです。太陽による光エネルギーは、約50%が赤外線、約47%が可視光、残り約3%は紫外線となります。遮熱塗料が果たす役割は、太陽光による赤外線を効率よく反射させることです。太陽光の日射反射率というものがありますが、これはどれだけ光エネルギーを反射するかという確率を表します。
その日射反射率が高いということは、遮熱性能が高いという意味になりなす。その日射反射率が高い塗料が遮熱塗料です。赤外線を反射してカットするため、その分熱エネルギーを蓄えることがなく、室内の温度上昇を抑制することができるのです。
業者にエアコンのクリーニングを依頼する
エアコンの効きが悪くなってきたと思ってカバーを開けてみると、「予想以上に汚れやホコリがびっしり……」ということになっているかもしれません。そのような場合は、業者を呼んで丁寧に掃除してもらいましょう。エアコンのクリーニングは複雑な分解をともなうこともあり、自分でおこなうと故障させてしまうかもしれません。
省エネ効果が高い最新のエアコンとは?
最近のエアコンは省エネ効果も高く高性能に進化しています。その中でも主なエアコンを紹介します。
AI搭載のエアコン
AIエアコンは、人工知能を搭載したエアコンです。たとえば、天気予報の情報と連携して、悪天候の情報が届いたときにはスマートフォンに連絡をしてくれます。
また、タイマーで予約運転をしかけると、AIの学習に応じて部屋の広さや翌日の天気にぴったりあわせた快適な温度を時刻までに整えてくれます。ほかにも、AIで各家庭の情報を収集し、学習しながらその家庭にあわせた快適な温度と湿度に調整していくのです。
省エネが進んだエアコン
エアコンの省エネ化、消費電力の削減は常に進歩しています。たとえば、15年前のデータと比べると約40%の削減になっていることがわかります。これは、エアコンの運転が安定するまでの時間の差によるものです。
作動直後のエアコンは、室温を設定温度にするために急速に暖気や冷気を発しています。その間は大きなエネルギーが必要になるため、消費電力も大きくなります。そして、室温が安定すると、温度を保つ安定運転に変わります。運転が安定しているときは、大きなエネルギーを使うこともなく、消費電力も小さくなります。
古いエアコンは、一定の温度を保ち運転を安定させるまでに時間がかかるために、多くの電力を消費してしまうのです。このような理由から、エアコンは最新の製品を選んだ方が節約になるということです。
買い替えのタイミング
エアコンの買い替え年数は、平均で約13年といわれています。しかし、使い方や環境によってはそれよりも先に寿命がくることもあるでしょう。
エアコンの寿命や買い替えのタイミングですが、以下のような、症状を見逃さないでください。
- ・異音がする
- ・水が漏れる
- ・風がくさい
- ・空気が温まらない、冷えない
- ・リモコンが使えない
- ・エアコンをつけるとブレーカーが落ちる
このような症状が起きたときはエアコンの買い替えを考えたほうがいいでしょう。また、キズや汚れが目立つようになったり、ほかの故障が起こったりした場合も、買い替えの時期です。
まとめ
エアコンの消費電力は季節によって変化のあるものですが、日ごろのこまめな掃除によって節約になります。すこしでもエアコンの消費電力をおさえて効率よく使用するためには、こまめな掃除やお手入れが不可欠です。
しかし、エアコンを分解して内部まで掃除するには時間がかかり大変です。難しいと感じる方は、エアコン掃除のプロに頼むとよいでしょう。
自分の手の届かない部分など細かなところまで、プロの業者ならば完璧にやってくれます。エアコン掃除以外にも、取り付け、取り外し、修理、クリーニング、メンテナンスなど、エアコンに関することは業者に相談してみると安心です。